血液とお金は流れが滞ると病気になる。

 私がお公家さんの若い課長から聞いた言葉の『明治維新はなぜ起きたか』と『金持ちには金を使う義務がある』には密接な関係がありました。
 
 『明治維新はなぜ起きたか』の教科書とは違う視点は、大商人が蓄財をしたからだという点にありました。
 昔から商人は商売のためにお金を用意しなければなりません。ゆえに習慣的に蓄財に気をつかい、悪くすると必要以上に貯めてしまいます。
 昔の蓄財は貨幣の備蓄です。当時の高額貨幣の基本は金銀でしたので、蓄財が進めば市中に流通する金銀が減少します。すなわち、大商人の蓄財が進むとお金の流通が低下して慢性的な不景気になるという事です。
 バブル崩壊を経験した世代には、不景気の沈滞した気分と陰鬱な気分を何とかしてほしくて社会変革を望む気分の高まるのが理解できるはずです。若い頃には何度も読破に挫折した小説『夜明け前』にもそんな現状打開への気分と夢の高まりが書かれています。
 
 金銀が貨幣の基本でありながら、大商人が貨幣を備蓄して金銀の流通が滞り、江戸幕府すら貨幣改鋳のたびに金銀の量を減らすというインフレ現象も生じ、それらの社会的不満が世間に蔓延したのが明治維新の下地になったと課長は話しました。
 この歳になってやっとそれが判りましたが、いま思えば旧家には歴史を正確に伝える家族文化があったという事です。
 振り返ってみると私は経験でしか学べない男でした。先祖の事でも、祖父すら住まいと職業程度しか判らないトホホ状態ですから、下層階級の生活も仕方のない事とあきらめています。
 
 『金持ちには金を使う義務がある』というのは明治維新だけではありません。歴史的に権力の集中と貧富の格差は社会的不安をもたらしてきました。ゆえに、幾多の権力者が神社やお寺に寄進という形で建物などを修復したりして経済を回してきたのです。
 言ってみれば、神社仏閣への寄進というのは経済効果の伴うセレモニーです。戦いにもある種の経済効果はありますが、戦いは人心を荒らしてしまいます。ところが社寺仏閣への寄進は人心を活性化する効果がありましたので、良いお金の使い方だったと私は思います。
 振り返って現代のお金持ちは良い方向でお金を使っているでしょうか。私には、よりお金を稼ぐためだけにお金を使っている気がします。(下層階級のヒガミです!!)